9月8日起き上がりにおけるon elbowでの肩の支持性(詳細はクリック)

立ち上がりにおける重心コントロールの考え方 セミナーレポート②

立ち上がりにおける基礎的なみるべきポイントについてまとめてみました。

前回は移動戦略や関節運動などをメインにお話してきましたが、今回は筋活動についてです。

前回の記事はこちら!

立ち上がりにおける重心コントロールの考え方 セミナーレポート①

脳卒中患者様は運動麻痺や筋緊張異常などの問題で、

整形疾患などの患者様と比較して筋活動がうまく発揮できないことをよく経験します。

例えば、運動麻痺により各関節を単独で動かすことが難しく、共同運動や連合反応などのように、

運動パターンの切替が難しいのも特徴です。

特に今回の立ち上がりや歩行などのように、一連の流れの中で生じる動作においてもそれは当てはまります。

では、その一連の動作を見る際に、何を指標に問題点を挙げていけば良いのでしょうか?

今回は、立ち上がり動作における正常動作として必要な筋活動のタイミングなどを、

各相にわけてまとめていきます!

屈曲相での筋活動

そもそも立ち上がり動作は、大きく4つの相に分けられており、

動作分析をする際は、それぞれの相で分けて考えることが多いです。

立ち上がりの4相
  1. 屈曲相
  2. 離殿相
  3. 伸展相
  4. 安定相

その際に、起こる筋活動のパターンは概ね4つの波形(筋シナジー)で表されます。

筋シナジーとは

多数の筋の活動にみられる協調構造を意味しており、簡単にいうとある動作において複数の筋活動が同時に起こることで、その各筋の組み合わせを表したもの。
歩行やリーチ動作などでも筋シナジーがみられる。

まず、立ち上がりの1相目の屈曲相では体幹前傾・骨盤前傾・股関節屈曲が必要でした。

筋活動でみていくと、骨盤前傾位での立ち上がりを行うためには

ハムストリングスが遠心的に伸ばされなければなりません(*骨盤前傾に対する拮抗筋の伸張性)。

ここでの骨盤前傾位での立ち上がりは、身体重心を足部に移すために必要で、

それよって重心線がより膝関節の近くを通過することになり、

次の離殿相に必要な大腿部の筋活動を相対的に抑制し、少ない負荷での動作が可能です。

上記の筋シナジー(筋活動パターン)でみると、

シナジー1の体幹前屈(屈曲相)では、ハムストリングス(BFS)や腹直筋(RA)の活動があります。

この時期の骨盤前傾位ではハムストリングスは伸張され、力学的な作用として下腿を後方に引っ張る力が生まれます。

それにより足部の中でもより踵に重心が移動しやすく、立ち上がりのための足底への荷重がより行いやすくなります。

しかし脳卒中患者様は骨盤が後傾位になりやすく、ハムストリングスが緩んでしまうことで、下腿を後方へ引っ張ることができず下腿が前方へ倒れてしまいます。

それにより足底荷重が得られず、立ち上がりの際に足が滑るケースもよくみられます。

その他にも、脳卒中患者様は座位姿勢で骨盤後傾に加えて大腿が外旋していることが多いのも特徴です。

この股関節外旋により、足底部は外側接地(小趾側支持となり)大腿筋膜張筋や外側広筋に依存した立ち上がりを呈すことも臨床上よくみられる運動パターンです。

このように、正常で起こるであろう関節運動から筋活動を把握することで、

実際にその動作の何が阻害因子として起こっているのか、

運動麻痺の問題なのか?異常筋緊張が作用しているのか?等を判断する材料につながっていきます。

離殿相での筋活動

では次に、離殿相における筋活動についてみていきたいと思います。

離殿相では下腿前傾をつくるために前脛骨筋の筋活動が重要で、下図のシナジー2(赤色)をみても前脛骨筋の活動が著明になっているのがわかります。

離殿相での注意点は伸展相で働く下腿三頭筋(ヒラメ筋)の活動です。

健常者であれば、下腿三頭筋の活動は前脛骨筋が活動した後に働くが、

脳卒中患者様は離殿の前の下腿三頭筋と前脛骨筋と同じタイミング(同時収縮)での活動がみられることで、

下腿の前傾が生じないことがあります。

そのため、この時期の下腿三頭筋の過活動によりBack Kneeのような形で立ち上がることがあります。

伸展相での筋活動

伸展相では下腿三頭筋(ヒラメ筋)の活動が重要で、

シナジー3をみると下腿三頭筋・大腿四頭筋(内側広筋・外側広筋)・脊柱起立筋が働いているのがわかります。

この際の下腿三頭筋の活動は、下腿を安定させることで、大腿部の回転運動に関わります。

しかし、下腿前傾の固定が行われないことで大腿四頭筋や脊柱起立筋の筋活動パターンがうまく使えなくなり、

上肢のプッシュアップなどを用いて重心を上げたりする代償が生じるケースがあります。

このように立ち上がり動作においても、各相ごとにどのように役割で筋活動が生じているのを理解することが重要となります。

立ち上がりから考える歩行動作の繋がり

そして、実はこのように各相における筋活動やその作用を理解することで、

治療においても、他動作との結び付けを考えることができます。

立ち上がり動作とよく類似して考えられるのが、歩行動作です。

その中で特に類似しているのが、立ち上がりの離殿相から伸展相になります。

立ち上がりにおける重心コントロールの考え方 セミナーレポート①

上記記事でも記載しましたが、

離殿相から伸展相にかけては歩行のLR~MSTと関係しています。

LRでの作用として、下腿の安定性や膝関節を軸とした大腿骨回転運動・重心の上方への移動があります。

これらは立ち上がりでも行われており、下腿の安定性に伴い大腿四頭筋や殿筋群の筋活動が発揮され、

重心を前上方へ持ち上げることが可能となります。

しかし脳卒中患者様は立ち上がりや歩行で、下腿三頭筋の筋活動の過剰反応による、

下腿後傾いわゆるBack kneeなどがみられることが多くあります。

このように各動作での共通項目が把握できると、動作時の問題点をより明確に理解することにつながります。

今回は、膝関節を中心に解説しましたが、

立ち上がりでは、重心移動の観点からも股関節や足関節・体幹筋の活動が直接的に膝関節の運動要素に影響することもわかります。

また、アライメント不良などによりシナジーという筋活動パターンが得られないこともあるため、今回の講義では立ち上がりには筋力・アライメント・移動戦略(運動パターン)が必要だということを解説しました。

最後まで読んでいただきありがとうございました!

次回のセミナーレポートでは、臨床場面でよくみられる現象や歩行とのつながりをより詳しくお伝えしていきます。

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