こちらは、歩行ナイトセミナーの「立ち上がりにおける重心コントロールの考え方〜基本動作でみるべき膝関節の機能解剖」のレポートになります。
前回は立ち上がりの筋活動についてお話ししました。3回目は実際の臨床でよくみられる現象や歩行とのつながりをメインに書いていきます。
1.立ち上がりから歩行へのつながり
2.臨床でよくある現象
3.まとめ
立ち上がりから歩行へのつながり
立ち上がりと歩行を別で考えるのではなく、共通点があるためつながりをもって考えてみる。そこで立ち上がりの離殿相から伸展相に着目する。セミナー①、②にも記載したが、離殿相から伸展相にかけては歩行のLR~MSTと関係している。LRでの作用として下腿の安定性・重心の前上方への移動・衝撃吸収がある。これらは立ち上がりでも行われており、下腿の安定性に伴い大腿四頭筋や殿筋群の筋活動が発火され重心を持ち上げることが可能となる。しかし脳卒中患者様は立ち上がりや歩行で、下腿三頭筋の筋活動による下腿後傾いわゆるBack kneeなどがみられたり足関節・膝関節が安定しないことで股関節周囲の筋活動が乏しくなったりすることがある。そのため、体幹・股関節の伸展活動がみられないことがある。
臨床でよくある現象
ケース①”体幹”の前傾。
セミナー1でも記載したが、体幹の前傾ではなく股関節の屈曲に伴う体幹前傾を行う必要がある。体幹の前傾では重心が後方に位置するため、離殿してもお尻が上がらないケースをよくみる。また、脳卒中患者様だけではなく開始肢位として骨盤後傾位になっていることが多くその状態で体幹前傾を行っても重心は後方に位置するため、立ち上がりが困難な患者様がいる。
ケース②過度な下腿前傾。
今回のレポートにも記載したが、膝関節に着目した際に開始肢位で下腿が前傾して、さらに足部へ荷重をのせる段階で下腿がさらに前傾する患者様をよく見る。脳卒中患者様はヒラメ筋と前脛骨筋の筋活動にエラーが起こることで下腿前傾での固定が行えないケースが考えられる。整形疾患では疼痛や筋肉の柔軟性・筋力低下などによって下腿前傾の固定ができないと思われるケースを臨床でみます。
ケース③プッシュアップなどの上肢依存。
立ち上がりの際、大腿部を押して重心を持ち上げたり、物を押したりして立つケースをよく見る。FIMなどのADLだけで考えると上肢の使用や支持物の使用で立ち上がることは悪くないと思う。しかし、基本動作や今回のように歩行とつなげていくのであれば、上肢による立ち上がりはいいとは思えない。
伸展相では下腿三頭筋(ヒラメ筋)の活動が重要で、シナジー3をみると下腿三頭筋・大腿四頭筋(内側広筋・外側広筋)・脊柱起立筋が働いているのがわかります。しかし、下腿前傾の固定が行われないことで大腿四頭筋や脊柱起立筋の筋活動パターンがうまく使えなくなり、上肢のプッシュアップなどを用いて重心を上げたりします。
まとめ
・立ち上がりは移動戦略、アライメント、筋活動、バランスが必要である。
・正常な筋活動パターンを誘発するにはアライメントや移動戦略を必要とする。また、脳卒中患者様は筋活動の発火タイミングでエラーを起こしている場合がある。
・立ち上がりと歩行は別物として考えるのではなくつなげて考える。
アプローチ方法などは動画にあるため、そちらの方も見てもらえたらと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました!