9月8日起き上がりにおけるon elbowでの肩の支持性(詳細はクリック)

立ち上がりにおける重心コントロールの考え方 セミナーレポート①

こちらは、歩行ナイトセミナーのレポートになります。

こんな方におすすめ!
  • まずは立ち上がりの基礎を知りたい!
  • 歩行との関係性について知りたい!
  • 明日からの臨床で活かしたい!

サンプル動画

はじめに

立ち上がりは日常生活において必要不可欠な動作です!

なぜかというと、トイレに行くにも、家の中を移動するにも、外出するにも、

歩く前にのほとんどは立ち上がりを行うからです!

ちなみに、この立ち上がり動作は1日にどの程度実施されているのでしょうか?

2015年に出されたシステマティックレビューでは、

立ち上がりは健常人で1日に平均45回程度実施されると述べられています!

1日の立ち上がり動作の平均数は33から71の範囲でした。
うっ血性心不全の患者、病棟の居住者、および高齢者の1つのグループを除くすべてのグループの平均数は少なくとも45でした。

Richard W Bohannon : Daily sit-to-stands performed by adults: A systematic review.J. Phys. Ther. Sci. 27: 939‒942, 2015

この立ち上がりですが、実際の臨床場面では歩行が可能でも

立ち上がりは支持物がないとできないという患者様がいると思います。

ではなぜこういったことが起こるのでしょうか?

この原因として重心移動が難しいことや、十分な筋活動が行えていないことが考えられます。

今回は、臨床場面でみるべき立ち上がり動作の基礎について学んでいきましょう!

立ち上がり動作をみるポイント

そもそも立ち上がり動作をみるポイントは、一連の動作で考える必要はありますが、

重要なのは歩行と同様に、まずは相分けする事です。

文献等でも分け方は様々ですが、一般的には、

  1. 屈曲相
  2. 離殿相
  3. 伸展相
  4. 安定相

の4相で分けられ、各相でみるべきポイントもあります。

各相におけるみるべき機能
  • 筋活動・筋力
  • バランス能力
  • 足の接地位置
  • アライメント・関節角度
  • 重心移動戦略

バランス能力(座位から立位):支持基底面が臀部・足部から足部のみに変化すること

アライメント:足の位置などが変化するだけで大腿部や体幹の筋活動が変化します
 *これらは身体に加わるモーメント(回転力)などを考慮する必要があります

移動戦略:その人がどのようにして立っているのか。動作の特徴。

移動戦略の例

足を引いてから立ち上がる

上肢のプッシュアップを利用して立っている

体幹前傾が著明に出現している など

次に、具体的に立ち上がりの各相でどの点に着目すべきかについてみていきましょう!

屈曲相

まず、屈曲相では殿部と足部にある支持基底面を足部に移動させるために、体幹ないし股関節が屈曲します。

その際に、体幹・股関節のどちらの動きが重要になってくるのでしょうか?

立ち上がりにおける屈曲相のポイント

答えは、股関節になります!

ここでよく臨床でみられるのが、股関節の屈曲ではなく、上部体幹などから屈曲(体幹前傾)するケースです。

屈曲相で重要なことは、殿部にある支持基底面を足部へと円滑に移動させることです。

その際に、体幹のみの前傾では、重心が前方へ移動せず、結果的に立ち上がりができないケースをよく経験します。

では、股関節屈曲を先行させるためにはどんな機能が必要になるのでしょうか?

それは、大腿部が固定された状態で、骨盤の運動が適切に生じることです。

その際に膝関節を屈曲位で保持する力がとても重要で、それにより大腿部の固定を可能とします。

そして次に骨盤を前傾位・股関節屈曲運動を体幹より先に行う事が重要です。

結果、離殿相にかけて身体重心を前方に動かすことに繋がります。

骨盤の前傾が生じないと重心が後方に残存し、立ち上がり時の大腿部に過度な筋活動が求められることになるのも注意すべきポイントになります。

離殿相

離殿相では先ほどもお伝えしたように支持基底面が足部へ移行していく相になります。

着目すべき運動として下腿の前傾が行われ、足部に体重が乗ることで殿部が上がってきます。

この際に問題になりやすいのが、バックニーが生じるケースです。

下腿の前傾運動の阻害が起こる(この時期に下腿三頭筋などの過緊張が生じる)ことで、重心が後方へ押し戻され、結果的に股関節・体幹の過屈曲を引き出すことが臨床上よくみられるパターンです。

そして、この時期における下腿の前傾は、歩行時の荷重応答期にも類似する運動様式となるため、

立ち上がり動作と歩行動作を合わせて考えていくことが重要になります。

【ナイトセミナー2021.4.26】LR〜MStにおける力学的要素と臨床でみるポイント

そこから、屈曲相で行った体幹前傾位を保持する必要があり、さらに大腿骨の回転運動が必要とされています。

ここで考えられる大腿骨の回転運動とは膝関節に対して大腿骨が前方に転がるようなイメージです。

しかし、下腿の前傾が不十分だと前足部まで荷重が乗り切らず殿部を持ち上げることが困難になります。

*よく臨床で生じる立ち上がり後に後ろに転倒しそうになるケースに多くみられる反応

伸展相

高齢者の方などは伸展相にかけて下腿の固定ができず、過度に下腿前傾をとるケースがあります。

この際に、考えられるケースは純粋に体幹や股関節が伸びにくいこと。

このような場合は、抗重力活動としての伸展筋群の活動に加え、ROM制限なども考慮する必要があるので、座位や背臥位などでの姿勢アライメントの評価をしっかりしてみてください。

安定相

安定相は立ち上がり相の中でも屈曲相と同様で動きが少ない状態で、より静止立位に近い形になっています。

こちらの静止立位の安定化に関しては立位のセミナーレポートを記載予定ですので、そちらをお楽しみに!

まとめ

立ち上がり動作において臨床上みるべき基本的なポイントについて、セミナー内容をまとめてみました。

立ち上がり動作におけるポイント
  • 立ち上がり動作は大きく4つの相に分けられる
  • 屈曲相では股関節→体幹の順に屈曲運動が生じる
  • 離殿相と歩行の荷重応答期は類似した運動パターンとなる
  • 伸展相と安定相ではより強い抗重力伸展活動が必要

最後まで読んでいただきありがとうございました!

次回は膝関節を中心とした【筋活動・シナジー】について解説していきますのでお楽しみに!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です